DPC病院の現在

第43回 DPC採用2年目の地域中核病院が目指す医療

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小山記念病院
事務長 鈴木 清隆 様
薬剤科科長代理/医療情報管理室 室長 
    花香 淳一 先生

病院プロフィール

名称 医療法人社団善仁会 小山記念病院
病院長 田中直見
所在地 〒314-0030 茨城県鹿嶋市厨5-1-2
病床数 224床(一般194床、地域包括ケア30床)
診療科目 内科、消化器科、循環器科、外科、乳腺外科、甲状腺科、整形外科、脳神経外科、呼吸器外科、産婦人科、泌尿器科、眼科、形成外科、皮膚科、新生児科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科、口腔外科
病院URL http://www.koyama-mh.or.jp/

第43回 DPC採用2年目の地域中核病院が目指す医療

人口28万人をカバーする地域中核病院

――小山記念病院の特徴について教えて下さい
鈴木事務長(以下、事務長) 当院は、1969年に開設され、2017年で48年目を迎えました。全国的な組織ではなく、鹿行地域に根差し、鹿行地域の方々と共に暮らしやすい街づくりに貢献することを目指した法人です。医療のほかに、介護、福祉、給食事業も行い、法人グループ全体で約1,000人の職員が勤務しています。また近年は、障がい者事業にも力を入れています。医療法人としては、全国で初めて特例子会社を設立し、障がい者就労支援事業所も法人グループとして開設しました。当院でも、障がい者の方が直接雇用で13名、間接雇用も含めると数十名の方が病院の業務に携わっています。さらには、事務作業やシュレッダー処理など障害をお持ちの方でもできる仕事を積極的に分担し、共存共栄できる職場環境を追求しています。

――小山記念病院は、どのような医療圏に属していますか
事務長 茨城県の中でも鹿行医療圏に属しており、人口約28万人をカバーしています。茨城県は、人口10万人に対しての医師数が175.7人となっており、全国平均237.8人に対し大きく下回る全国ワースト2位です。さらに、県内でも、この鹿行医療圏は88.6人と茨城県内でワースト1位であり医師不足が深刻です。その中で、当院は50名以上の常勤医が勤務しており、地域の皆様へより良い医療を提供するために日夜励んでいます。
市民公開講座
(写真:市民公開講座)

――DPCを導入されたのはいつですか
事務長 7年間の準備病院の期間を経て、2016年4月にDPCを導入しました。他病院と比べると遅い参加になりましたが、病院スタッフのマンパワーの確保や、スタッフの意識統一、モチベーションがないと、DPC導入は難しいと考えていました。2016年は、電子カルテ導入や医療機能評価の更新もあり、病院全体が急性期病院として次のステージへ進化する機運が高まりました。私たちにとって、ベストなタイミングが2016年でした。

機能評価係数IIは県内3位

――DPC導入に向けて、どのような準備をされましたか
花香医療情報管理室長(以下、室長) 導入に向けて、理事長と院長の命により職種横断的なDPCプロジェクトチームが立ち上がり、事務長を中心とした話し合いの場が多数ありました。DPC導入するまでの1年間に、病院機能評価、電子カルテ導入、診療報酬改定の準備もあり、プロジェクトチーム内に限らず、様々な場面、様々なメンバーで準備を進めた、密度の濃い1年でとても勉強になりました。

――DPCに対する不安を抱えたスタッフはいませんでしたか
室長 理事長や院長の命によるものでしたので、反対の声はありませんでした。しかし、DPC病院となり、本当に健全経営ができるのかという不安の声は、一部であったと記憶しています。その心配を払拭するために、事務長が顧問の医師にアドバイスをいただきながら、医師と個別面談を行われていたのが奏功されたのではないかと思います。結果としては、「DPC病院になっても、医療を大きく変えることはなく、今まで通りで良い」ということが、理事長や院長からの大きなメッセージでしたので、医師も安心して診療を行うことができたようです。また、看護師などコメディカルのスタッフに対しても、スライドを用いて繰り返し制度について丁寧に説明をさせていただいたので、最初の1か月を乗り越えたのちは、混乱はありませんでした。

――DPC導入前後で、一番の変化は何ですか
事務長 今まで以上に情報共有を意識するようになり、特に、定量的・客観的データを共有するようになりました。各部長会や、所属長級の会議で、データを発表し、病院運営会議や経営企画会議などで当院は何が優れていて、何が標準的なのか、どの点を改善する必要があるのか、などを積極的に議論するようになりました。私自身も、医療の質や標準治療というものを確認し、自分自身が勤務している病院の医療の質を意識するようになったと思います。
小山記念病院鈴木事務長
(写真:鈴木事務長)

室長 病院のホームページでも情報をオープンにしていますし、病院運営がより分かりやすくなったというスタッフの声もあがっています。

――機能評価係数IIは、茨城県で3位、全国順位でも107位という位置です。その理由について、どのようにお考えですか
事務長 特に、特別なことをしているわけではなく、この地域で求められている医療と真摯に向き合っている結果だと思います。ただ、茨城県医療計画にも掲げられている通り、自院の機能でできる5疾病・5事業への取り組みは、特に意識しています。

室長 現場にいると、脳卒中・頭部外傷や虚血性心疾患のホットラインがあり、24時間365日受け入れているアクティブの高さは、急性期病院であることを強く感じますし、地域に求められているということを実感します。地域に貢献するためにと思うと、スタッフ同士も自然と活気がでます。この地域には、急性期病院の数が限られていますので、地域ニーズに応えること以上に重要なことはないと思います。

――DPC導入に際し、薬剤の採用はどのように変わりましたか
室長 DPC導入前年の2015年は、後発品採用の割合は使用量ベースで40%台でした。そこから、1年半程度かけて使用量を87%まで増やしました。最初は、医師の不安も少なからずあり、抗がん剤や循環器系の重要な薬など後発品に替えて大丈夫かという声も聞かれましたが、各科医師と問題がないことを確認しながら少しずつ移行しました。

――1年半というのは短期間ですね
室長 経営判断のスピードは、本部事務局長が特に強く意識されており、当院の特徴でもあります。品目数としては、全部で1,500品ほど採用していますが、使用量ベースで上位300位まで出しました。その中から、後発品があるもの、剤形が変わらないもの、流通が安定しているもの、メーカーとの関係性が良好であること、などを切り替えの条件としました。E・Fファイルに基づいて、現在でも3か月ごとに見直しを図っています。

医師がクリニックまわりをして顔の見える関係を構築

――地域医療連携にも力を入れていると伺いました
事務長 地域の先生方と密な連携をとらせていただかないと、地域住民の皆様がより良い医療を受けることができるという、地域医療構想計画の実現はできないと考え、DPC導入2年目を迎えた2017年4月から連携をより強く意識しています。院長直轄の医療連携部を立ち上げ、大学病院前教授で地域医療連携も担当された顧問の医師に、部長に就任していただきました。地元医師会にもご協力いただき、隔月1回のペースで、開業医の先生方をお迎えして勉強会を開催しています。例えば、前回のテーマは「胃がんのABC検診」で、約10名の地元医師会の先生方にご参加いただき、その他の医療職を含めると約60名の方々に参加していただきました。
勉強会
(写真:小山記念病院の医師も参加する勉強会)

先生方お一人お一人、診療方針やお考えが異なりますので、それらを丁寧に把握していくことが、まず第一歩だと思っています。当院の医師も、鹿嶋市内35か所の一般診療所を中心に、鹿行医療圏115の開業医の先生方と積極的に顔の見える関係性の構築に努めています。

――その背景には、どのような事情があるのですか
事務長 鹿行地域は、南北に長いエリアという特徴があり、例えば、がん患者様の半数が千葉県などの鹿行地域外の病院へ流出している現状があります。がん化学療法にしても、当院でできる治療と同じ治療を受けるために、一日がかりで東京まで行く患者様もいます。わざわざ東京や千葉などに行かなくても、この地域で医療を完結していただくために当院は何をすべきか、今一度原点に戻ってデータや地域の皆様のご意見を参考にさせていただきながら改善し、情報提供をさせていただく必要性を感じています。地域の皆様に当院を知っていただき、信頼していただける体制を構築することが大切だと思っています。

――医師同士が顔の見える関係性を築けると、紹介や逆紹介もよりスムーズになりますね
事務長 例えば、2017年4月より胃がんの腹腔鏡手術を開始し、また7月より尿管結石に対しては、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)による治療を開始しました。そのような時も、地域の先生方に、「患者さんに遠くの病院を紹介する必要がなくなるので助かります」との声をいただき、顔の見える関係作りが非常に重要だと実感しました。

全職員が1年間の行動計画を策定

――DPC導入を契機として、事業計画や病院の運営方針に変更はありましたか
事務長 中長期的な事業計画は以前からありましたので、DPCを契機としてより短期的な計画も作るようになりました。短期と言っても、目先の成果を求めるのではなく、中期目標のために、今やるべきことは何なのか、事業計画に基づいた行動計画を全職員が作り、2017年4月より取り組みを始めたところです。

室長 行動計画は、振り返りがしやすいように、また来年につなげていけるようにという意味で、全員が同じフォーマットを使用して目標を立てるように変更となりました。項目としては、戦略に対する行動計画、計画責任者、成果尺度、目標値があります。半期で進捗状況を振り返り、年度末に目標値に対する実績値を記入して、達成できたか振り返るものです。
花香医療情報管理室長
(写真:花香医療情報管理室長)

――実施1年目ですが、半年経った感触はいかがですか
事務長 どのような事を目標にしたらいいのか、わからないという声もある中で、皆で考え設定した行動計画です。1年目ということもあり、まずは意識できれば合格点かなと思っています。行動計画は、この組織でワクワクしながら主体的に働くことができるようになってほしいという願いも込めたツールです。職員一人一人、持っている価値観は違うので、職員一人一人の価値観の中で職員が輝けるような職場を実現したいです。良い医療を提供して、地域に貢献するためには、一人一人が共通認識をもって同じ方向(=事業計画)を向いていければ、それは強みになります。行動計画を立てて自己実現し、それが地域に貢献につながることが、5年10年かけて当院の文化として根付いてくれれば良いと思います。

――ほかにも、変えたことはありますか
事務長 行動計画を立てるうえで気づいたことは、目標を立てても自分の所属部署だけでは達成できないことが多々あるということです。そのため、副院長に相談させていただきながら委員会をすべて見直し、参加メンバーの最適化を図りました。まだ縦割りの組織運営が強かったところ、事業計画を実現するうえで、横のつながりを重視し、より多くのスタッフの視点が反映されるように、参加メンバーを見直しました。

――組織を整えたあと、現場からはどのような声が上がりましたか
事務長 特に女性にとっては話せる場ができたということは、良かったようです。同職種や直属の上司には話しにくいことがあったとしても、委員会なら発言しやすいということもあるようです。私たちが気づかなかったことが挙がってくるようになり、風通しが少し良くなったと実感しています。

――会議の時間を捻出するのは、大変ではないですか
事務長 まだまだ不十分ではありますが、基本的には業務内に行います。理事長自らが、業務改善として「早く帰ろう!キャンペーン」を宣言しているほどです。急性期病院なので予測できないこともあり、限界はありますが、ICTやスタッフ増員などで、一人ひとりに対する負荷を軽減するように経営努力しています。例えば、採血を臨床検査技師が看護師の代わりに行ったり、看護の事務系クラークや、介護や排せつケアなどを行うスタッフを増員することで、看護師の負担を軽減し、患者様と向き合う時間をより確保できるように努めています。

――事務長として、鈴木さんはどのようなことを大事にされていますか
事務長 病院においては、医師や看護師など患者様と直接接するスタッフが主役だと思っています。対して、事務方は主役が働きやすい環境を作るための黒子に徹したいと思っています。臨床とマネジメントは車の両輪であって、どちらが強すぎてもうまくいきません。両輪のバランスがとれるように、ということを意識し、かつ、マネジメントは臨床の表に出過ぎないということも強く意識しながら働いています。

――最後に、DPC導入2年目ですが、今後はどのような病院運営をしていきたいですか
事務長 地域に信頼される病院になる、ということが一番重要です。地域医療構想計画や、DPCデータを見ながら、地域の皆様、職員の皆様の声に耳を傾け、地域貢献していきたいと思います。地元目線ということを常に念頭に置きながら、急性期病院として成長していきたいです。
鹿島神宮清掃活動
(写真:職員が参加する鹿島神宮での清掃活動)