DPCマネジメント研究会について~代表理事挨拶~

 

代表理事あいさつ

真野俊樹

医療機関の従事者にとっては困惑してしまうことではあるが、保険者から医療機関への医療費の支払われ方は徐々に厳しくなっている。近年ではレセプトの電算化に伴い、出来高払いの部分についても管理が厳しくなってきているが、やはり大きな変化であったのはDPCの導入であろう。2003年4月から特定機能病院82病院にDPC(Diagnostic Procedure Combination)と呼ばれる一日当たり疾患別定額払い(以降包括払いという)という支払い方式が導入された。旧来の出来高払におけるCheckは「医師のモラル」と保険者/支払い基金しかなかった。したがって医師側は、医療に制限が加えられていない環境のもとで、自らの裁量権に基づき医療を行ってきた。また経営的な側面から言えば、いかに多くの医療行為を行うかに焦点が当てられてきた。
しかしながら、包括払いにおいては状況が全く逆になる。つまり限られた範囲内でいかに効率的な医療を行うかに焦点が当てられることになる。ここで効率的という表現をしたが、効率的な医療であるためには包括払いと同時に質の担保が必要である。
DPCという診断群分類であるかどうかにはかかわらず、このような支払い方式は世界の潮流でもある。この方式が導入され20年近く、研究会も15年を終えた。DPCの流れは変わることはないが、研究会としても少しリニューアルを試みた。皆さんのアンケートにもよくあるが、ひとつは、医療に対する変化は避けられないがそれはDPCのみならず、データやICT、AIの利用に広がっているということだ。そこで、年に2回であった総会では、幅広く医療の変化の潮流を追うことにしたい。
本研究会では、このような包括払いであるDPCの元で、どのようなマネジメント手法が必要であるのかを考えてみたい。
実は、包括払いと、出来高払いというとまったく対立した概念のように思われるがそうでもない。むしろ連続的なものと考えたほうがよい。すなわち、包括の範囲をどんどん細かくしていけば、出来高払いに限りなく近づくからだ。出来高払いにまったく対立する概念は、日本では行われていないが、英国やマネジドケアの1部で行われている人頭払いになる。これは患者あるいは住民1名につき、たとえば1年間でいくらを支払うので、2000名の住民を登録するなら、その 2000倍のお金を予算として支払うという考え方だ。
いずれにせよ包括払い導入下では、一番多く収益(売上でなく)を挙げるには、効果的な資源配置を行いコストを下げることが効果的であることになる。しかし 1日定額の包括払いと異なり、DRG/PPS導入下では経営的にいえばどのコストを下げ、どこに資源投入するかの判断が現行の経営スタイルでは難しくなる。これを打ち破るためにはさまざまな経営学的なマネジメントが不可欠である。そのために、DPCや病院の実務に近い研修や勉強の場としてベンチマーク部会をオンラインで2か月に1回程度開催していく予定である。皆様のご支援、ご参加をお待ちしたい。

多摩大学 医療・介護ソリューション研究所 中央大学大学院
真野俊樹